派遣社員として働くときに必ずといっていいほど問題になるのが、業務以外の雑用の話です。大手の会社に派遣されたときは、コンプライアンスの関係から雑用を派遣社員に依頼しないように徹底されていますが、世の中の会社すべてがそうなっているわけではありません。
派遣されてから「トイレ掃除は当番制だから」と言われるようなこともあり、そういうときにどうしていいのか悩む人もいますよね。徹底して断る人もいますが、その結果として派遣契約を更新してもらえなかったりします。
それでは派遣社員は雑用を依頼されたときに、どう振る舞うのが正解なのでしょう。ここではその答えを導き出すためのヒントをご紹介していきます。
仕事ができるというのはどういうことか
「あの人は仕事ができる」と言われるのはどんな人だと思いますか。派遣社員の場合は、依頼された仕事を迅速かつ間違いなく終わらせる人がこれに該当します。これは間違いありません。
でも、ここにひとつの罠があります。
そもそも仕事というのは何なのか。それは正社員と派遣社員で認識に大きな違いがあります。就職の面接でよくある「潤滑油」問題ですが、正社員は、職場において潤滑油になることも仕事だと考えています。
でも、派遣社員は潤滑油では契約を更新してもらえません。歯車の役割になることを求められて派遣契約を結んでいますので、本来は歯車以外のことをする必要はありません。
ところが正社員として一緒に働いている人からすると、潤滑油の役割を果たさない派遣社員に対して「使えない」という印象を持ちます。お茶くみやトイレ掃除をしないというだけで評価が下がります。
少し理不尽に思うかもしれませんが、これが現実です。
それぞれの立場での「仕事ができる人」にギャップがあり、それぞれが自分の理想を追求しようとするのでトラブルになります。だったらどうすればいいのでしょう。その解決策を考えていきましょう。
雑用の有無は面接時に確認しておく
お茶くみなどの雑用を、派遣社員がしなければいけないかどうか。これに関しては必ず面接時に確認しておいてください。ただしスタンスとしては「嫌とかそういうわけではなく、トラブル回避のため」という前提で確認しましょう。
- 雑用は仕事に含まれるかを確認
- 雑用の内容を確認
- 業務時間外には雑用があるか確認
基本的にはこの3点は必ず行ってください。特に気をつけたいのが業務時間外には雑用です。職場によっては、始業前に掃除などをさせられることもありますが、派遣社員としてこれだけは認めてはいけません。
基本的には、雑用は仕事であるという共通認識を持つようにしましょう。そして雑用によって依頼された仕事の進捗が止まることがあっても、それは仕方のないことだとお互いが分かっていれば雑用のストレスも減るはずです。
逆に「仕事ではないけどやって欲しい」と言われたら、その派遣先での仕事は止めておきましょう。そういう会社は、派遣が始まるとなし崩し的にあれもこれも業務を依頼してくる可能性があります。コンプライアンスの意識の低さも問題です。
自分に求められた役割を演じきる
トイレ掃除やお茶くみなどについて、面接時に「しなくていい」と言われても、実際の現場ではそれを求められるようなことがあります。それを頑なに断ると、「使えない人」のレッテルを貼られます。
契約更新を現場レベルで拒否されることもありますし、契約更新をしてもその職場に居づらくなってしまいます。
ですので、基本的には現場レベルで雑用を求められたらそれに応じてください。仕事ができる人ほど「自分はそれを求められて派遣されてきたのではない」と言いたくなりますが、少なくとも目の前にいる人は、それを求めているわけです。
もちろん、まったく違う業務を依頼される場合には断らなくてはいけません。データ入力の仕事で契約したのに、サーバー管理などの仕事を依頼されたというのは別問題です。派遣法に関わる問題ですので、依頼されても断ってください。
ただ、断るにしても言い方があります。「無理です」「嫌です」と突っぱねたのでは、人間関係が悪化します。理想は「問題ないですけど、それって時給上がります?」と聞くことです。
「上がらない」と言われたら「じゃあ無理です」と答えればOKです。できるだけ笑顔で断りましょう。やる気がないわけではないという姿勢と、何でも言いなりになるわけではないという姿勢を伝えてください。
とはいえ、基本的には求められた役割を演じきるのが、派遣社員のあるべき姿です。それが自分の理想ではなくても、カメレオンのように変化してみせる。派遣社員として働くというのはそういうものです。
自分らしさを貫くならリスクを受け入れる
求められるがままに合わせるというのは、相手に媚びているようで嫌だ。自分は自分らしく働きたい。依頼された業務だけをしていたい。人間関係なんて知ったことではない。いろいろと思いはあるかもしれません。
それなら別に、それで構いません。自分らしさを貫いて働くというのも、かっこいい働き方、かっこいい生き方だと思います。
でも、それによって発生する契約終了というリスクをきちんと受け入れるようにしましょう。契約を更新してもらえなくても「相性が悪かった」とすぐに気持ちを切り替えるようにしてください。
間違っても派遣先に対する愚痴を、SNSなどでこぼさないようにしてください。派遣先に問題があるのかもしれませんが、それを引き出したのは自分のスタンスであるということを認めること。
それができずに、派遣先の悪口を漏らすのはみっともないことです。
自分らしさを貫くなら、最後まで強い自分であるべきです。相手に合わせないなら、衝突はどうしても起こるものです。自分らしくいながら、誰ともぶつからないでいられるなんてことは絶対にありません。
誰ともぶつからずに自分らしさを貫きたいなら、圧倒的な実力を見せつけてください。その位置に立てるように努力を積み重ねるか、それを諦めてリスクを受け入れるか。自分を貫くなら、そのどちらかを選びましょう。
まとめ
派遣社員として契約更新をしてもらいたいなら、相手が何を望んでいるのかをしっかり考えて行動するようにしましょう。雑務を依頼されると「それは自分の仕事ではない」と突っぱねたくなることもあるかもしれませんが、依頼された以上は自分の仕事です。
- 契約とは違う業務は断る(雑用は除く)
- 時間外の雑用は断る
契約を更新したいなら、できるだけ柔軟に対応してもらいたいところですが、この2つに関しては、「超えてはいけない線」であることを覚えておきましょう。コンプライアンス的にも問題ですし、自分の価値を下げてしまうことになります。
いくら更新をしたくても自分を安売りしないことです。柔軟な対応は必要ですが、言いなりにはならないというスタンスも重要です。
柔軟さを持たずに、自分らしさを貫くのもひとつの生き方・働き方ですが、その場合には更新されないというリスクを、完全に受け入れるようにしましょう。良いとか悪いとかではなく、それが社会というものです。
自分らしさを貫きたいなら「いつ派遣契約が終了してもいい」と腹を括り、派遣先で周りの社員に嫌われようが気にせずに、自分の道を突き進みましょう。ただ、そういうスタンスで働き続けられるほど派遣は甘くないということは、忘れないようにしてください。