「派遣」と聞くと、どうしても事務の仕事を考えてしまいがちですが、実は技術系の派遣のほうが歴史は長いのです。もともと「設計会社」という形で、企業から仕事をもらってくるか、企業内で仕事をするというのが技術系派遣会社の原点です。ですので、基本的には派遣会社の社員として働く「特定派遣」となります。「派遣」のイメージである「安定していないから将来が不安」というのは当てはまりません。
技術系派遣の最大のメリットは「大企業で働ける」ということにあります。ソニーやトヨタ、NECといった就職活動で人気企業の職場で学歴とは関係なく働くことが出来るのです。高卒でも専門学校卒業でも関係ありません。ほとんどの人か就職活動ではじかれた有名メーカーで働くことが出来るのです。しかも派遣会社は人手不足なので、メーカーに比べて楽に入社することが出来ます。設計部門でいえば、メーカーの70%以上が「派遣」を活用しているという調査結果があります。有名メーカーで作られている製品のほとんどは派遣社員が関わっているのです。
それでは、メーカー側にはどんなメリットがあるのでしょう。最大の理由は「正社員を増やさないで、人員を確保できる」ということです。正社員というのは意外とお金がかかるのです。保険料や、年金だけではなく退職金も積み立てていかなくてはいけません。教育費用というものもかかります。しかしながら、派遣社員であれば「単価4000円」となれば一時間あたり、4000円払えばよいだけです。高いように思える金額でも、永遠に払い続けるのではなく、必要なときだけ契約を結べばよいので結果的には安くなるのです。もちろんデメリットもあります。「技術やノウハウの伝承が出来ない」ということがよくいわれます。これはメーカーにとっては大変なことですが、派遣社員の立場からすれば、それほど重要な部分を任されるとも言えるのです。
それでは派遣社員のデメリットは何でしょう。まずは「最初の数年は自分のしたい仕事にはなかなか就けない」と言うことがいえます。「設計をしたい」と言っても経験のない人にいきなり設計をさせてくれるメーカーなどほとんどありません。ほとんどの人が現場での組立作業や実験・検査といった仕事に就き、やりたいことが出来ないという不満や、このまま現場で仕事が続くとスキルがあがらないのではという不安から派遣社員を辞めていくのが実情です。
技術系派遣社員で成功するキーワードは「スキルアップ」です。常に自分のスキルを高めなくてはいけません。初めての派遣先では当然分からないことばかりです。学校で習ったことのほとんどが役に立ちません。ですので自分で調べるということが重要になってきます。わたしの場合、給与のほとんどを技術書に使い、派遣元の通信教育を受講しました。週末は大きな図書館へ通っていた時期もありました。そしてもうひとつ重要なのは「人に聞く」ということです。分からないことは自分で悩むだけでなく、先輩社員に聞く姿勢が必要なのです。聞く相手は派遣先社員でも良いですし、他社派遣社員でもかまいません。一番仕事の出来る人に聞くのが良いでしょう。とにかくスキルアップの姿勢のない人は長続きしません。メーカーが必要としているのは「能力の高い人」だからです。
メリット、デメリットそれぞれありますが、私としては技術系の学生はまず派遣会社で働くべきだと考えています。技術力を高めるにはメーカーよりも派遣会社のほうが向いているからです。メーカーではどうしても甘えが生まれます。派遣社員は長期間同じ場所で働きたければ、能力を高め続けなくてはいけないという緊張感が常にあるので、成長のスピードが全く違ってくるのです。そして、派遣会社の社員であるという安定性もあり、何よりもどこへ行っても自分の力で仕事が出来るという自信が持てることが最大のメリットになるでしょう。