プレミアムフライデーが導入されたときには、「バカバカしい」と思っていた国の働き方改革ですが、プレミアムフライデーの成否はともかくとして、着実にこの国の働き方に変化を与えつつあります。
その中でも派遣社員は、働き方や給料にとても大きな変化が起きつつあります。「同一労働同一賃金」の実現のために2020年4月には派遣法が改正され、派遣社員の待遇改善が期待されています。
ここではそんな、働き方改革によって、派遣社員の働き方がどのように変わっていくのかを解説していきます。
交通費が支給されるようになる
ほぼ確実だとされているのが「交通費の支給」です。派遣会社によっては、すでに交通費を支給してもらっていたかもしれませんが、それでもまだ多くの派遣社員が交通費なしで働いていたかと思います。
往復に2,000円近くかけて通勤している人もいて、これではいくら表面上の時給が上がっても手取り給料が少ないままです。正社員に交通費を支給しているなら、当然派遣社員にも支給しなくてはいけない。
これが「同一労働同一賃金」の考え方になります。
派遣社員にとっては、これはかなり大きなメリットですよね。「でも時給が下がるだけでは?」と思うかもしれませんが、時給そのものも上る可能性があるのが、働き方改革のポイントになります。
なぜそんなことが起こるのかを次章で詳しく説明します。
働き方によって派遣社員の給料が上がる可能性
働き方改革の肝は「同一労働同一賃金」ですから、派遣先で正社員と同じ仕事をしていたら、給料は正社員と同じになります。正社員とまったく同じ仕事をするというケースはまれですが、それでも限りなくそこに近づきます。
例えば正社員の給料が24万円だたっとします。20日の出勤で1日8時間労働なら時給換算で1500円ということになります。そうなると、同じ仕事をしている派遣社員も時給が1500円にならなくてはいけません。
さらに、正社員はボーナスや退職金がありますので、派遣社員は時給にこれらの上乗せがあります。ただし、これらの考え方については、法解釈が固まっておらず、どうなるかは分かりません。
ただ、明らかに正社員よりも時給が低いのであれば、それは改善されなければいけないことになります。このため、多くの正社員が時給アップになり、さらには交通費も支給されて正社員と同等の暮らしができるようになります。
不安要素は派遣社員を雇わなくなるということ
2020年4月の派遣法改正によって、派遣社員の待遇が改善されるのは間違いありません。ただし、これが喜ぶべきことなのかどうかは、まだ判断できる状態にはありません。
簡単にいえば、派遣法改正によって、国が派遣先に対して「派遣社員にもっとお金を払え」と命令しているような状態になるわけです。
一とはいえ派遣先に無限の資金があるわけではありませんので、「そんなお金は払えないから派遣社員を雇うのは止める」という会社も増えてくることが予想されます。それだったら正社員を雇うという会社も出てくるはずです。
派遣社員が重宝されているのは、結局のところ「安いから」というのが現実です。それをおかしいと指摘するのは確かに正論ですが、コスト面でのメリットがなければ使わないという会社が増えるのは容易に想像がつきます。
国としてはそれで正社員が増えることを狙っているかもしれませんが、世の中はそんな思い通りにはいきません。会社も収益を上げないと人を雇うことはできず、正社員も派遣社員も雇えずに倒産する会社が出てくる可能性もあります。
実際に最低時給を引き上げた韓国では、失業率が大幅に上がってしまいました。これと同じことが日本でも起こる可能性があります。
大規模な派遣切りに備えてすべきこと
2008年に大規模な派遣切りが行われたことを、覚えている人も多いかと思います。私もそのときに派遣切りに合い契約終了となりました。2020年はそれに近い状態が起こる可能性があります。
それに備えて今からしておくべきことが2つあります。
- 派遣先で必要とされる人材になる
- 転職活動を行う
まず大事なのは派遣先で生き残るということです。派遣先も派遣社員の数を減らす可能性がありますが、ゼロにすることはあまり考えられません。そうなれば派遣社員の生き残り競争になります。
これから半年かけて、派遣先で求められる人材になることが重要です。仕事ができるのはもちろんのこと、正社員ともコミュニケーションをとれる人材であることがとても重要です。
もちろん媚びを売る必要はありません。むしろそれは逆効果で、大事なのは対等な関係を意識しながらも半歩引くという感覚です。簡単ではありませんが、少しずつ意識してみてください。
そして、もうひとつは派遣切りに備えて転職活動を行っておくということです。今回の働き方改革によって、派遣社員から正社員に切り替える会社も増えてくるはずです。しかも正社員にも長時間労働を求められなくなりますので、人材不足が予想されます。
だとすれば正社員の求人が増えることが予想されます(大手企業が派遣社員を雇わずに、アウトソーシング会社に仕事を依頼すことになり、アウトソーシングを受ける会社の人材が不足して、求人が増える)。
先手を打って転職活動を行っておけば、派遣切りに合う前に正社員としての道を切り開けるチャンスです。2020年1月くらいから転職活動も合わせて行っておきましょう。
まとめ
2020年の派遣法改正や働き方改革によって、派遣社員の働き方が大きく変わる可能性があります。派遣社員の待遇改善というポジティブな予想をしている人が多いようですが、実際には無い袖は振れないという会社も多く、派遣切りが発生する可能性もあります。
未来のことは誰にも分かりませんが、備えておくことは誰にでもできます。ポジティブな変化を期待しつつも、必ずしもいいことばかりではないということも忘れないようにしてください。